読書感想文2

高い城の男 (ハヤカワ文庫 SF 568)


第二次世界大戦連合国が勝利した世界に生きている私が手に取った小説の中に、

第二次世界大戦で枢軸国が勝利している世界があり、

さらにその作中に、第二次世界大戦連合国が勝利していたら?という小説が登場する。


私が生きる世界もこのメタフィクションの一部として存在し、私のもう一つ上の次元に、第二次世界大戦で枢軸国が勝った世界があってもおかしくない気がしてくる。


この作品はたくさんの事実と嘘が入れ子のように重なっていて、読んでいるうちに何が正しいことか曖昧になってくる感覚が面白い。ここからわかるのは、事実というのは自分の主観だけが暫定している、極めて不確定な要素であること。


でも人間はそんな不確定要素を持ちきれないほど抱えて生きていかないといけない。不安がデフォルト状態だから、みんなずっと昔から神様とか他人とかなにかに自分の正当性を訊ね続けている。


そしてこの作品にはキル・ビルみたいな謎のオリエンタル感とブシドー賛美があって(笑)、登場人物は皆、易(占い的なやつ)に自分の運命を訊ねている。


ただ、易ですら大きな運命の流れを汲み取って伝えてくれるツールというだけ。その流れを変えるっていうことはできない。それは数少ない確定した事実であり、だからこそ抗わず流れに身をまかせて生きていくのが吉と思います。スナックで働いてた時のママがそう言ってたからねえ、テレサテンかよ…


終わり